『ドラえもん のび太の宝島』現代っ子は宝島を夢見るのか。

『ドラえもん のび太の宝島』

2018・日

今井一暁

Filmarks 3.7

Imdb

最近はゲームばっかりしてブログなんて頭をよぎりもしなかったけど、ドラえもん映画とあっては、久々にねちっこく感想をぶちたくもなるもんです。

『君の名は。』のプロデューサーでお馴染み川村元気の初脚本作品。

例の映画は日本映画史に残る大ヒットを記録したが、僕の中ではただの雰囲気映画だという認識が拭えなくて、今でも好きではない。

今回のドラ映画でも共通する部分は多くて、雰囲気だけの感動話と、挿入歌に頼る泣かせ。論理性の欠いたノリだけの展開。

駄作だと思うけど、いつものわさび版のオリジナル大長編のがっかり感と同じ程度。

ゆるめの設定や、魅力のないゲストキャラ。お涙頂戴と今どきらしい出来栄え。

しかし一番問題なのは、宝島というテーマに対してあまりに不誠実な点だ。

作り手側が、宝島とか、それを夢見る気持ちというものにまるで関心がないかのようだった。

僕が大長編ドラえもんで特にたのしみにしている場面は、主に前半の展開だ。

のび太の願望を出発点に、夢のような冒険にでかけ、ひみつ道具を駆使してひたすら陶然とたのしむ。冒険と言いつつも、極力危険はすくなく、楽しさが勝っている場面だ。

後半になると、使命を帯びて、ドラマとして盛り上がっていく。

そんな前段階のただただ楽しさを満喫するようなところが、大人になった今でもたまらなく好きだ。

しかし、近年の作品はそのパートが蔑ろにされているように思う。

前作では、のび太の願望と、テーマのはずの南極があまり一致していなかった。

本作では、出来杉に小説『宝島』の話を聞いて、宝の島を夢見る。ここまでの展開はいい。ちゃんとのび太の願望がテーマに向かっている。しかしそれはただ単に、原作コミックスのネタを引っ張るためと、話の導入のためだけであって、「21世紀に宝の島を夢見ること」をしっかりと考え抜かれているようには思えなかった。

いちおう「衛星写真で地球を隅々まで眺めることができる時代だ」というセリフもあり、作りても自覚はしているようだったが、そこを反転させて、それでも「現代でも宝の島を夢見ること」を観客に提示しようとは思っていないようだった。これでは前振りのセリフが、問題提起ではなくただの露悪的な言い訳にしかなっていない。

ネタバレを挟んでの指摘にはなるが、そもそも本作に登場する宝島は、宝島ではない。

話の始まりでは、海底火山噴火によってできた新しい島に宝。それを知ったのび太たちはその島を目指す。

実はその島の正体は、未来からきた“時空海賊”の潜水艦で、島に擬態していたのだ。

(まあこの段階で、巨大な島に“擬態”してテレビカメラに中継されてまで海上に姿を表す理由は全くないのだが)

原作のドラえもんが書かれた時代から科学が発展し、神秘の居所も少なくなった現代。そんな時代に、未知への冒険心を掻き立てるのは難しいことだけど、そこはセンスオブワンダーで補うのが創作ってものじゃないのか。

ただのタイトル詐欺なだけかも知れないけど、のび太と一体化して宝の島を目指す導入部からはどこへも着地できない設定だ。

いちおう、ひみつ道具「宝探し地図」が反応した理由も提示はされる。金銀財宝、わかりやすいお宝が大量に見つかるが、「いつか役に立つからって集めた」の一言で未来人がなぜ中世の価値観で言うオタカラを集めていたかを納得させにかかる。これは設定ではなく言い訳を用意しているだけではないか。

大長編ドラえもんのテーマを、なにかお話のネタ、程度にしか思っていないし、ネタ程度でも、それを練り上げようとした感もうすい。

設定や展開のもろもろ粗が目立つのは、僕が大人になって狭量になってしまったからだとしても、夢がないのは年齢にかかわらず残念な点だといえる。

それ以外でも、退屈ななぞなぞで話がもたついたり、アニメ世界で金髪と黒髪は別人にしか見えないとか、しずかとゲストヒロインがそっくりなところが活きる展開が一箇所もないとか、雑なところは枚挙に暇がない。

中でも安易だったのは、のび太とパパの関係とゲストキャラ家族再生をお涙頂戴で結びつけている点だ。まだ、駄作の秘密の島のほうが親子関係はちゃんと描かれていた。

夢のある話題を用意してみてはいいものの、結局はその夢を信じていないことしか伝わってこなかった。

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コメント

  1. The Guest より:

    全然面白くなかったわけでもないのですが、「宝島」というモチーフがまったく活きてないなあと思いました。
    一番最初の「謎の島出現、そこにお宝の反応が!?」という出だしと、島に向けて航海に乗り出すシーンだけはちょっとワクワクしたので、
    その後キャプテンシルバーの名前を借りたこと以外「宝島」要素が一切ないストーリーに舵を切っていったのが残念。
    しかもそのストーリーもゲストキャラの間だけで話が完結しちゃってる感じがね…クライマックスらしき対決シーン、終始「これのび太たち要る?」と思いながら観てました