『パッセンジャー』

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『パッセンジャー』

Passengers

2016・米

モルテン・ティルドゥム

IMDb 7.0

Rotten Tomatoes 31%

トマトメーターは低めだけども、設定の面白さと、クリス・プラットが出てるのでそこそこは楽しめるだろうと思ったんですが……

こんなに面白いのに、こんなにも面白くない。

予想通りなのに、予想通りの満足感が得られないのです。

おおむね予告編通りの内容。必要な要素は大体そろっているものの、なんだか心を揺さぶらない。

SFガジェットに魅力はあるけどそれほど真新しくもない。

主演二人は熱演をふるっているけど、お決まりの見せ場ばかり。

しいて言えば、エピローグの飛躍の仕方がそこそこ好きです。

面白い話が面白くならない

もちろん出だしは面白い。移住先の第二の地球到着の90年前に目覚めてしまい、再冬眠はできない。宇宙船内だけで一生を終えることになってしまった。しかもひとりきり。

これだけで、サバイバルものや、一種の終末もののような感じがして面白い。

しかし、宇宙船の設備は機能しているため、衣食住には事欠かない。サバイバル感はない。

課題となるのは孤独だけ、しかし、映画やゲームなど娯楽は充実しているし、簡素なAIや、精巧なアンドロイドなど話し相手がいなくもない。バレーボールよりは話を聞いてくれるし、バーテンダーアンドロイドは接客のためのウィットに富んだ会話もできる。孤独感ダウン。

この場面が、現代風刺のように、コンテンツにあふれているのに孤独感がぬぐえないという描写になっていれば共感ができたかもしれない。

しかし、いかんせん尺が短く。ヒロイン登場までのテンポがよすぎる。

本来持っている面白さを妨げる要素がそこここにちりばめられている

予想を裏切るような、いわゆるツイストが弱い。
目覚めさせたヒロインは予想通りの理想の性格をしている。真実を知って怒るのも観客にとっては予想通り。
男側に、目覚めさせた罪悪感が感じられない。宇宙船内で終える一生を押し付けるなんてかなりの大罪だ。にもかかわらず。出会い、距離を縮める、体を重ねる、プロポーズ(的に指輪を渡す)すべての行動に引け目が感じられない。
だからこそ、「二人の間に秘密なんてない」って言葉が出るんだろうけども。本当にバレるまで忘れてたみたいに見える。

完璧な設定などないけれど、本作の場合、設定の穴がそのまま主人公への不信感へつながってしまう。
運命の眠り姫が実は、男が無理やり目覚めさせたというのはかなり魅力的なお話だ。
でも、女性側が主人公で、サイコ男とのサスペンス劇でもない限りは、男に共感できる作劇が必要。
しかし本作はいかんせん爪が甘いため、男が苦渋の決断をしたというよりは、安易な行動にしか見えない。

男は1年以上一人で過ごし、かなり長い期間、眠れる女性に思いをはせている。
ここの時間経過が感じられないのも大きいが、ほかの手立てがぼんやりとしか提示されないのもまずい。

乗組員の冬眠部屋はセキュリティのために固くロックされて権限があるものしか入れない。(その割に、権限がないものが早めに目覚めるような事態はありえないとかほざく)
そのため男は乗客しか目覚めさせることはできない。

しかし、VIP用の客室は工具でこじ開けられる。
各部屋のセキュリティの違いが判らないので、男の頑張りが不足しているようにも見える
しかし食事提供の機械は、いじれず、わびしい朝食ばかり食べている。
いろいろと、どこまで自由がきくのかがわかりづらい。
そのため、主人公の男が決断しようにも、ほかにやりようがなかったのかと疑問がわき出る。

中盤になって、いきなりもう一人の人物が登場。
乗員役のローレンス・フィッシュバーン。ここまで登場人物二人だけで進んできたうえに、大物俳優が飛び出し結構なサプライズ。でも映画の面白さとは結びつかない感じ。
彼が来たことで、乗員専用の部屋に入れるようになったりはしたけども、主役二人の関係性に影響を与えたりはしない。体調不良でさっさと退場です。

エピローグでの飛躍とアンディ・ガルシア
クライマックスの顛末は予想通りだった。宇宙船は復旧し、二人とも無事。もう一度冬眠状態に戻れる可能性を見つけたものの、二人で生きていくことを決める。

そこからが予想外だった。
場面が90年後に飛んで、乗員乗客が目覚める。エントランスに来てみると、そこには、木々の生い茂る自然と小さな家が建てられていた。
宇宙船内に家を建てるという発想は思いつかなかったので、虚を突かれて感動した。
できれば、主人公の理想の家のディティールをしっかり前振りしてほしかったのと、女性側の思いの成就として、二人の物語が本になっているとかあったらもっと良かった。

もっと理詰めで主人公を追い詰めていたら、スリルも感情移入もぐっと上がったろうに。