『素敵な相棒 ~フランクじいさんとロボットヘルパー~』
Robot & Frank
2012・米
ジェイク・シュライアー
IMDb 7.1
Rotten Tomatoes 86%
かねてより、AIが登場する作品は大好物。登場するキャラクターが女性的でも男性的でもどちらも好きだ。
2001年宇宙の旅、her、アイ・ロボット、アンドリュー。
そのものずばりのAIも好きな作品。
徐々に心を宿していって、人間以上に人間的になっていくさまは感動的だ。何より、生きていること、人間とは何か、命とは何かを問い続けるという、観客にも共感できるドラマがあらかじめ備わっているため、魅力的なキャラクターになりやすい。
そんな期待を持って本作を見たけど、ぜんぜんそんな話じゃなかった。
今回登場するロボットは、名前さえない介護ロボットだ。
人工知能というより、人口無能。与えられた命令に従うだけで、自ら考えたりはしない。ましてや感情なんてない。
そこに主人公のフランクが勝手に思い入れをもつという話しになっている。
ただ、ここの設定が秀逸だ。
フランクは、認知症の初期症状が表われている。日常生活はかろうじて遅れているものの、記憶が混同したり、万引きなどの問題行動を起こすようになっていく。
見かねた息子が、ロボットヘルパーを買ってくる。
徐々に記憶を失っていくフランク。メモリーを蓄積させていくロボット。
ロボットが録画した映像を見ながら「うらやましい記憶力だ」とこぼす場面もある。
終盤になると、ロボットのメモリーをリセットするか否かを迫られる場面が来る。フランクはロボットに愛着を抱き、リセットを拒む。しかし、ロボットには感情もなく、淡白にリセットが最良の選択だと言い切る。
人間の記憶にしても、ただただ本人の愛着よるもので、別に大事なものではないのかもしれない。
作中、図書館の本を電子化するという話題も上がる。デジタルとアナログ、物質とデータとさまざまな思いを想起させる秀逸な場面だ。
ラストシーンでは、フランクは養護施設に入っている。ぼんやりとした様子で認知症はかなり進んでいるようだ。
しかしその分、頑固さが抜けて温和な雰囲気に変わっている。衝突していた息子とも仲良くやっている様子だった。
施設では、見慣れたロボットが何体も働いてる。
フランクは認知症が進み、ロボットのメモリーはリセットされた。
そんなラストなのにどこかあたたかい印象で描かれている。周囲に人がいて、少しだけロボットのことも憶えている様子だ。
おそらく、忘れてしまっても、周囲に人たちや、ほんの少しの思い出でも残るものがあるということなんだろう。